・万能ではないマウスピース型矯正歯科装置

マウスピース型矯正歯科装置による矯正治療には状態に応じて向き不向きがある

 

インビザラインなどのマウスピース型矯正歯科装置を今ではよく耳にするようになりました。

 

マウスピース型矯正装置による治療はワイヤーを用いる矯正治療と異なり取り外しが可能、目立ちにくいなどのメリットから希望される患者さんが増えてきています。

 

ただ、どのような治療においても同様に良い面もあれば注意しなくてはならない点もあります。

つまりマウスピース型の矯正治療は万能な治療法ではなく、向き不向きがあることを理解して治療を受けなくてはなりません。

 

 

矯正治療により生じるトラブル

矯正治療は高額ですが、マウスピース型矯正装置(インビザライン等)は更に高額な契約額となる場合があります。

2023年1月には実質無料とうたい高額な矯正治療を勧め突然閉院した銀座の歯科医院がニュースとなりました。

そのニュースでは契約後の突然の閉院による金銭トラブルだけではなく、矯正治療による患者さんの不調も取り上げられていました。

実際に、矯正を任せる医院を探していた患者さんから”マウスピース型矯正装置(インビザライン)で矯正をした周りの知人の多くが失敗しているからどの医院に任せるのか慎重になっています”という言葉も聞きました。

 

 

当院が高額な治療を勧めるのではなく、フェアに治療選択肢を説明している理由について

矯正治療法によりつくれるゴールは異なるという事実

最近も他院でマウスピース型の矯正治療を受けた方から、歯並びは良くなったけれども噛みにくいので見てほしいという相談を受けました。

その方は矯正治療後、前歯でかみにくいという相談を担当医にしたところ、

このようなものです。前歯は空いているので食事をする際には下顎を前に出して噛んでくださいと言われたとのこと。

前歯でものを噛み切れるようかみ合わせを改善しようとすると矯正の再治療が必要となり、当院ではまた治療費がかかってしまうため様子見を選択されました。

 

マウスピース型の矯正治療では前歯では噛めるけれども奥歯が空いている、前歯で噛みきれないなどのかみ合わせのトラブルがワイヤーによる矯正治療に比べ起こりやすい治療であるということを認識の上で私たちは治療を行なっています。

 

 

マウスピース型の矯正治療においてもシミュレーション通りに歯が動くとは限らない

上述のように歯は思うように動かないことがあります。

状態による修正を行いやすいワイヤー型の矯正治療と比べマウスピース型矯正治療では治療期間延長や治療内容の変更・追加の治療代が必要になる場合が十分に考えられます。

マウスピース型の矯正治療に比べワイヤーを用いる矯正治療は治療期間が短くすむことが多いことや、かみ合わせや歯と歯の隙間などを適時調整できるという大きなメリットがあります。

ただワイヤーを用いるため患者さんによっては審美的なことなどをデメリットと感じます。

 

先にお伝えすると、ワイヤーによる矯正が最善と勧めることはありません。

当院ではマウスピース型の矯正治療も行なっているため歯磨きもしやすく歯並びの改善を楽しんでいる方が多くいらっしゃいますが、矯正相談や診断時にマウスピースによる矯正治療が適応がどうかを確認し、様々な治療と合わせ相談をした上でご希望を伺っています。

 

 

 

マウスピース型矯正装置を用いる治療を受けたいと希望される患者さんへ

”ワイヤーによる矯正であれば矯正治療を考えてはいないのでマウスピース型の矯正治療を希望します”

そのような希望を聞くことも稀にありますが、私たちは矯正治療後の患者さんの生活や健康を考えて治療を行なっているため、上述したようにその方にマウスピース型矯正装置による矯正治療が合うかどうかを確認し、患者さんの思いを尊重しながらもより良い治療選択肢があれば説明・相談をしています。

無理をすることがあれば、治療期間が長くかかる、ワイヤーによる再矯正が必要となる、歯並びがきれいでも噛みにくい完成により中長期的な観点では歯を傷めてしまうなどのことも起こりうるからです。

 

 

ワイヤータイプかマウスピース型矯正装置を選択するかは見える見えないの問題ではない

患者さんの多くがマウスピース型矯正装置を用いる治療に不向きな方がいるということを知らず、”ワイヤーよりマウスピース型矯正装置の方が目立たないから希望する”という、矯正治療を受ければいずれの治療法でも結果は同じと感じています。

実際にはそれぞれの治療により同様の完成を得られる訳ではありません。

治療過程が目立つかどうかということもありますが、治療法により治療期間も異なりますし、どこまで理想的な完成をつくることができるかを考えるとマウスピース型矯正装置による治療でも問題ない場合もありますが、極力目立たないよう考慮する上でワイヤーによる矯正を勧める場合も多々あります。

それぞれの治療にメリット・デメリットがあり、マウスピース型矯正装置による矯正においても上記のように良い面もあれば不向きな面もあるということを理解した上で治療に臨んでほしいと思っています。

 

当院では治療法・治療過程も相談をしながら、歯並びや笑顔だけではなくかみ合わせも診て未来の歯の健康も考える治療を提供できるように努めています。

 

 

 

矯正治療同様に高額であり、かつ専門性の高い治療 インプラント

矯正治療もインプラントもいずれも困られている方には素晴らしい治療ですが、診査や診断が重要です。

状態がすぐれない方が治療を受けるとインプラントではオペによる事故やかみ合わせ不良、インプラント周囲炎などのトラブルが生じる場合があります。

インプラントも矯正も状態に応じて向き不向きがありますがデメリットやリスクの説明があまりなく治療に臨んだ結果、生じたトラブルにより後悔されている方がいます。

高額であり大きなトラブルが生じる可能性のある治療だからこそ、当院では専門性の高い治療において専門分野と連携をとる総合的な歯科治療を行なっています。

 

 

私たち自身が受けたい治療を

患者さんの全てを抱えるのではなく、安心して治療を受けられる環境を提供したい。

私自身が歯科治療を受けるのであればそのような医院にかかりたいと願います。

 

内科や皮膚科、耳鼻科、外科など、医師の資格があっても専門が別れているように、当院では患者さんに最善を提供するため、契約額の高い専門性の高い治療までも自身で抱えるのではなく、患者さんにとってより良い治療を提供する医院でありたいと思っています。

 

 

矯正治療は歯並びが良ければ良いのではなく、長く歯を残すためにはかみ合わせも含めた矯正治療を行わなくてはなりません。

インプラントも同様です。治療を受けて良かったと思われる方ももちろんたくさんいますが後悔されている方もいて、それを聞いた方がインプラントは怖いから考えていませんと言われます。

 

長く健康でいられる。

それは当たり前ではありません。

歯は日常生活で欠かすことはできず、ただ、消耗品のように傷んでいくためどれだけ良い状態をつくることができ、患者さんのサポートをできるかを考え診療しています。

 

 

ただ、私たちが治療を行なっていても最善の結果を得られるものではありません。

歯の状態に治療内容や結果は変わりますし、例えば根管治療では用いる器具の破折、麻酔のトラブルなどが起こる可能性はあります。

それらを理解している上で最善の提供に努めることで、前向きに通っていただけたらと願っています。