・セラミックスの質に関係する支台歯形成

前歯の治療においては長持ちを目的とするだけではなく、審美的に喜んでいただける質も求められます。

長持ちに影響するポイントとしては

・再根管治療の場合に歯に致命的なダメージを与えないようコアを除去する

・根管治療の質

・歯周病の治療 歯肉の炎症のコントロール

・歯の破折・抜歯を極力防ぎ、また、刺青のように歯肉が暗く見えるようになることを防ぐため、メタルコアではなくファイバーコアを用いる

・支台歯の適切な形成

・適切なかみ合わせの調整

が挙げられます。

 

ここでは支台歯形成について説明をします。

 

支台歯とはクラウンを支える歯のことであり写真のような状態を言います。

 文京区豊島区茗荷谷千石歯医者高橋歯科クリニック文京

セラミックスクラウンの長持ちに支台歯の形がなぜ関係するかというと、この支台歯の長さが短ければ噛む力を受けクラウンはゆるみ外れやすい完成となるからです。

セラミックスを支える支台歯が低い場合と、高さを十分に確保している場合とで外れにくさは変わるのです。

仮歯やクラウンが緩み外れてくる際には支台歯が短い、適合不良などの理由によりはまりが弱い可能性が考えられます。

(ただし支台歯の隣の歯も軸は傾き少し先端が欠けているように、かみ合わせ等も関係するため支台歯の形や高さも制限を受ける場合はあります)

 

 

また、色が合わないセラミックス、厚みがあり歯並びが揃わないセラミックスの多くには支台歯の形に問題があります。

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このセラミックスは歯の軸が反対のねじれのある前歯に合わせハの字のように開いた完成であり、かつ厚みがあり色は浮き、三角形のような形に見えています。

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セラミックスクラウンを除去すると、クラウンはこの支台歯の向きに合わせてつくられたことが分かります。

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特に前歯の治療においては症例写真にて受診前に治療の質や歯科医師の審美的な感覚を確認することが患者さんにとって治療の満足度を上げることとなります。

私は治療を開始する際にこのような並びが綺麗という完成イメージをまず確認し、セラミックスを除去すると同時に仮歯にてだいたいの完成形を患者さんと共有します。

この方は前歯が両方とも捻れる形よりもセラミックスにて他の歯と並びを揃える方が前歯の違和感を薄めることになるのでこのような並び・最終形を仮歯を用いて提案をし、確認していただいた上で根管治療を行いセラミックス作製を行いました。

(もちろん矯正治療も行うことがより望ましい完成をつくることができますが以前のブログにこの方のケースを書いたように患者さんは矯正治療までは望んでいませんでした。歯根の軸も確認をし歯の破折が起きにくい完成をつくれるよう努めています。)

 

 

下の写真はこのページ上部にある支台歯の歯型を側面から見た写真です。

支台歯と支台歯の奥に見える歯はちょうど上のセラミックスと同じ位置、つまり上顎正面の前歯のものです。

支台歯の形はセラミックスの強度を確保した上で色をつくるため、天然歯の相似形と近い形になります。

左側の黒い線が天然歯の表面ですからセラミックスの形、厚みや色を逆算し右側の黒い線に支台歯の形態を整えています。

例えば支台歯が赤い線のような削り方であった場合には、完成するセラミックスは必然的にオレンジの線で示す厚み、形となるため、セラミックスの歯だけが前に出ているような完成となってしまいます。

つまり、仮歯ですでに厚みがある場合にはこのように支台歯に調整が必要であるということを意味します。

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仮歯の重要性について前回のブログで説明をしましたが、支台歯の形により完成するセラミックスの持ちや厚み、色、軸、形は変わります。

ただ、形や色をつくるためセラミックスに自由を与えようとすると支台歯は小さくなりやすく脱離の原因となりますし、長持ちを考え支台が少しでも大きければセラミックスを天然歯に近い形ではつくれず、つまり色をつくりにくく形も大きく厚みが生じ並びがずれることにつながります。

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上記のようにもし支台歯が右側の青い線のように小さければ左側の青い線のように形は天然歯に合わせつくることができますがクラウンを支える支台歯が短いため脱離しやすくなってしまいます。

仮歯が頻繁に外れることがあればこのような理由が考えられるため、完成したセラミックスが脱離しにくいようコア・支台歯の形を修正する必要があります。

 

仮歯にて厚みや並び、歯の大きさ、軸、とれやすさ、表情の一部として機能しているのかを確認しなくては”喜んでいただけるようなセラミックス”をつくることは難しいと思っています。

セラミックスの質を仮歯が表すと説明をしましたが、仮歯が調和するものであるためには支台歯形成の質が重要となるのです。

 

 

治療の理想は天然歯を再現するようなサイズ、軸、色のセラミックスをつくることです。

そのためには完成から逆算する支台歯形成と仮歯での完成形の確認だけではなく、長持ちをさせるための根管治療やかみ合わせ、歯周病治療、シリコン印象による精密な型取りにも質が求められます。

 

 

歯科治療はとても難しいものです。

調和する完成を求めるには高いレベルでの3次元的なイメージ、そしてそれを実行する技術やテクニックも必要とされます。

 

このような前歯の審美には多くの方が困られています。

セラミックス治療は患者さんの日常をより豊かにし笑顔にする力を持っているため、困られている方の力となることができるようこれからも研鑽を続け進みます。